『超人X』第5巻では、獣島の夏合宿が一転し、同時多発の強襲に飲み込まれます。
トキオの羽獣化、エリィのチャンドラ吸収、そして舞台を移した「弔いの塔」で聖母ゾラが明かすXEMBER(聖母の血)と黒き災いの予言。
物語の核心が次々と露わになります。
本記事では、第5巻のあらすじ・見どころをネタバレありで徹底解説!
トキオ・アヅマ・エリィの死闘と成長、そしてゾラが突きつける「獣の徴」をめぐる選択までを詳しく掘り下げます。
超人X5巻のあらすじは?

第4巻では、トキオとアヅマの激闘やエリィの過去、そして籠村の一族に隠された悲劇が描かれました。
舞台は獣島での夏休み特別合宿へ移り、トキオ・アヅマ・エリィの3人がそれぞれ成長を遂げていきます。
そして第5巻。アヅマの前に謎の超人が現れた瞬間から、物語は再び大きく動き出します。
新たな戦いの幕開けです。
獣島の訓練
トキオは籠村と共に飛行練習を繰り返していました。
何度も挑戦と失敗を重ねた末、ついにわずかに浮かぶことに成功。
二人は大喜びし、ハイタッチを交わします。
籠村は少し照れながら「感覚をつかむまで、何度でも繰り返すぞ」と声をかけます。
訓練後、籠村はトキオに「本気でキーパーになりたいのか」と問いかけます。「キーパーは生半可な気持ちで目指せるものではない。時に命を落とすことだってある」と諭します。
トキオは、昔から自分は一生懸命になれたことがないと打ち明けます。
「俺は…自分がない自分のこと恥ずかしい」
超人X5巻第28話より引用
しかし今は、「なにかあったとき、アズマを止められる超人になりたい」と決意を語ります。
その直後、「ピィィーン」と鋭い信号音が響き渡ります。
二人は顔を見合わせ、戦闘の発生を察知。反応は二人の超人です。
トキオは直感的に「アヅマだ!」と確信します。
信号の発生源へ向かう途中、濃厚な煙が二人を包みました。
姿を現したのは、煙を操る超人チャンドラ・ヒュームです。
「目的はなんだ!」と籠村が叫ぶと、チャンドラは鼻をひくつかせて笑いました。
「獣の超人……。ヤマトモリで訓練を受けているはずだ。だが、その匂いは我が母のものだな」
超人X5巻第28話より引用
チャンドラの狙いはトキオでした。トキオと籠村は必死に迎え撃ちますが、圧倒的な煙の力の前に苦戦を強いられます。
それでもトキオは渾身のパンチをチャンドラの顔面に叩き込むことに成功。しかし、チャンドラを激昂させてしまいます。
籠村はトキオにこう告げます。
「ここは自分が引き受ける。お前は東のもとへ向かえ」
超人X5巻第29話より引用
アヅマもどこかで戦っている。相手がどんな存在かは分からない。チャンドラ相手に時間を使っている暇はない。
籠村は冷静にそう判断しました。
しかし、トキオは譲りません。
「だったら俺がチャンドラの相手をする!」
超人X5巻第29話より引用
「アイツの狙いが俺なら、俺が逃げ回ればいいだろ!?」
真剣に頼むトキオに、籠村は「分かった!」と応じ、アヅマのもとへ急ぎます。
3人の刺客の襲来

その頃、アヅマは謎の女性の襲撃を受けていました。
完全獣化しナイフで首を切り裂きます。しかし切断箇所からは新たな体が増殖し、反撃を受けます。
「反応いいな君。よっしゃ、やろう!殺し合い、好きなんやろ?」
超人X5巻第28話より引用
楽しげに告げる女性。その不気味な気配に、アヅマは危険な相手だと直感します。
その正体は曼荼羅御体の超人・指子。
四肢を自在に増殖・伸縮させる異能による格闘術は、凄まじい猛威を振るいます。
かつて戦った、ろくろ首の超人・ジョニーの能力をさらに進化させた上位互換。
まさに怪物と呼ぶにふさわしい存在です。
アヅマは、地面から繰り出された攻撃に対応できず、思わず隙を見せてしまいます。
次の瞬間「ゴキィ!」と四肢を逆方向にへし折られ、絶叫。
痛みにのたうつアヅマを前に、指子は愉悦に満ちた声で囁きます。
「レイズ!レイズ!ほ〜ら、たった一回だけじゃ物足りへんよ!」
超人X5巻第29話より引用
アヅマは「レイズ」と唱えて傷を再生。
この相手には自分の持てる全てを注がなければ勝てないと覚悟を固めます。
高台からスピードを活かして突撃。
不意を突いたアヅマは指子の首に組みつき、締め技を極めます。
蹴りを浴びても離さず、冷静に考えます。
「外傷は治癒できても、脳に酸素が回らなきゃ、たまらないだろッ…」
超人X5巻第29話より引用
しかし、指子は「頭できろ!」と叫ぶと同時に、無数の頭部を増殖。
無数の頭が襲いかかり、アヅマの体を食い破ります。
その異様な光景に、アヅマは心の底で再確認するのでした。
「ジョニーの上位互換…?いや、こいつはもっと化け物だ」
超人X5巻第29話より引用
さらに、中央キャンプにも新たな刺客が現れます。
デスボイスの超人・森ひろとです。
森は「野怨」という力で、地中の骸骨を操って攻撃を仕掛けます。
混乱する中、エリィたちは必死に応戦しますが、森の声は空気を切り裂き、破壊的な衝撃波となって戦場を支配します。
その中でシャラポアはエリィに告げます。
「黒原たちを探してきてくれ」
超人X5巻第29話より引用
「ここは時間稼ぎだ」「森の狙いは別にある!!」
エリィは「わかった!」と言い、トキオのもとへ向かいます。
因縁と混沌化

アヅマのもとへ急ぐ籠村の前に、突如として剣が地面に突き立ちました。
足元は瞬く間に泥へと変わり、動きを封じられてしまいます。
「これは、故・輪坊法師の…創作剣」
超人X5巻第29話より引用
そう気づいた瞬間、姿を現したのは、かつて籠村の一族を滅ぼした宿敵。鵺(ぬえ)でした。
不気味な笑みを浮かべ、鵺は静かに「ごきげんよう」と告げます。
籠村は借剣「貫臓」を構え、鵺は借剣「真泥海」を解き放ちます。
真泥海は、触れたものを泥化させる恐るべき力。
貫臓の一撃は通じず、剣同士の激しい攻防が続きます。
籠村は「盗んだ力の癖に……」と心中で憤りを募らせながらも必死に応戦しました。
窮地を打開すべく、籠村は借剣「輪坊」を繰り出し、渾身の一撃で鵺の体を真っ二つに切り裂きます。
しかし、鵺は怯むことなく新たな術「剥戯撫・胡朝」を発動。
裂かれた体から蛾が湧き出し、ゆらりと舞いながら周囲を漂います。
なおも斬撃を重ねる籠村ですが、切り裂くたびに蛾が現れ、次第に感覚が歪んでいきます。
視界がぐにゃりと揺らぎ、体が震え、地面に崩れ落ちました。
「輪幻視毒、試すのは初めてです」
超人X5巻第30話より引用
鵺の囁きが耳を刺します。
さらに鵺は籠村の剣に目を向けて語りました。
「輪坊法師の主刀をあなたが持っていたとは……これで二刀そろう。収集欲をそそられますが、今はその時ではありません。あなたとは、いずれまたどこかで」
超人X5巻第30話より引用
そう言い残し、鵺は姿を消しました。
その頃、アヅマは指子の容赦ない攻撃を受け、生身の体では到底持ちこたえられないと悟ります。
攻撃よりも守り。
そう考えたアズマは「生成!」と叫び、体に纏う鎧をイメージ。瞬く間に全身を硬質なよろいで覆います。
「オオ〜、ガッチガチやんけ〜!」と楽しげに笑う指子。
「試してみようか」と言い、無数の頭を生み出し、四方八方から襲いかかります。
アヅマは鎧で防御を固めながら、生成した剣で反撃。
手応えを感じ、「これはいける!」と確信します。
しかし、指子は楽しげに言い放ちます。
「ええやん。ええでキミ。おねーさんの持論やけど、強くなる男ってのは最初からルートがぜんぜん違うんよ。ホンマもんは戦いの中で成長する」
超人X5巻第30話より引用
「キミ、強(つよ)〜ぉなれるで!生き延びたらな!!」
その言葉とともに、指子の体が異様に軋み始めます。体中から無数の指が生え、肉体を覆い尽くし、より異形の超人へと変貌をとげます。
その現象は、混沌化(カオシー)。
※混沌(カオス)とは超人の暴走状態。能力が溢れ、自我を失い、制御不能となる危険な境地です。指子のような者はその混沌を純粋な力として扱い、人間の心をとうに手放している存在でした。
怪物と化した指子の猛攻に、アヅマは為す術もなく打ちのめされます。
怒りと苦痛の渦中で、ついにアズマの中にも制御不能の炎が灯ります。
「ぶっ殺してやる!!」
超人X5巻第30話より引用
その叫びと共に、アヅマ自身も暴走状態へ突入していきます。
囮と決意
一方その頃、トキオは囮役として「脚だけ獣化」をさせながら必死に時間を稼いでいました。
しかし、森の中で姿を隠しても、なぜかチャンドラに見つかってしまうことを不思議に感じます。
思い出したのは、ナリの言葉でした。
超人が力を使うと特殊な信号が発せられ、近くの超人に伝わって居場所がバレてしまうというのです。
そこで、トキオは考えつきます。
ならば、力をONとOFFで切り替え、逆に翻弄すればいい。
獣化すれば位置はバレるが、解けば気配を消せる。
その特性を活かし、時間を稼ぎます。
しかし、姿を見失ったチャンドラは逆上。
「もういい!焼き芋にしてやるから出てこい、クソガキ!」と叫び、黒煙を爆発させ、辺りを濃い煙で覆います。
逃げ場を失ったトキオは覚悟を決め、「完全獣化」を宣言して全力で抗います。
しかし、チャンドラの猛攻に手も足も出せず、トキオの意識は遠のいていきます。
死の淵でトキオは問いかけます。
「俺を探してたのって…お…俺を…殺すため‥?」
超人X5巻第30話より引用
「だったら…他の人はほっといてもらえたり…無理スカね…」
するとチャンドラは怒号を返します。
「貴様を探していたのはだなぁ!」
超人X5巻第30話より引用
その時、記憶がよみがえります。
チャンドラがトキオを追い続けた理由。
それは「我が母」から託された使命でした。
近い将来、ヤマトに大いなる危機が訪れる。
その時、この地を守るには「救いの獣」が必要になる。
その存在を探せと命じられていたのです。
チャンドラにとって、トキオはまさにその候補。
「死ぬな少年!生きろ!……殺すぞ!」
超人X5巻第30話より引用
狂気じみた叱咤が、絶望の淵に響き渡ります。
極限状態の中で救いに現れたのはエリィでした。
駆けつけたエリィがチャンドラに一撃を与え、トキオは九死に一生を得ます。
エリィは仲間たちの戦況を伝え、トキオは「アヅマが誰かと戦っていること」「自分が狙われていること」を報告しました。
勇敢だな、とトキオを褒めるエリィ。そして「動けるか?」と問いかけます。
「うん」と答えるトキオに、エリィは力強く宣言しました。
「アイツ倒すぞ!2人で」
超人X5巻第30話より引用
チャンドラとの因縁はエリィ自身にもありました。だが今はそれだけではありません。
先生たちも、籠村も、アヅマもそれぞれ戦っている。だからこそ、自分たち二人でどうにかするしかないのです。
「めちゃくちゃ強いよ、あのおっさん」と不安を漏らすトキオに、エリィは迷いなく答えます。
「知ってる。オラ、アイツに一度ぶっ殺されたからな」
超人X5巻第30話より引用
「……お前の方が勇敢だよ」と心で思うトキオ。
「死にかけの俺でも良いかな?」と言うトキオに、エリィは即座に返しました。
「いいよ!でも死ぬな!」
超人X5巻第30話より引用
互いに覚悟を確かめ合い、トキオの胸に不思議な感覚が芽生えます。
エリィが隣にいると、怖さが消える。
やってやれる気がする。
そしてついに、トキオは「完全獣化」へと踏み切るのでした。
「獣をよこせ!」と迫るチャンドラに対し、エリィは舌を出して「嫌だ!」と強く応じます。
焦熱の空中戦

チャンドラ・ヒュームは黒煙を渦巻かせ、「焦熱スクリュー・ドライバー!!」と必殺の一撃を放ちます。
エリィはトキオを守るため、その体を抱きかかえ、黒煙から必死に逃れます。
トキオを一度地面に降ろすと、エリィはチャンドラと真正面から空中戦に挑みます。
エリィとチャンドラの攻防の中、トキオが「俺もいるぜ!」と言い放ち、背後から渾身の蹴りを叩き込み、チャンドラを地面に叩きつけます。
エリィも「これはいつかのお返しだ!」と叫び、頭上から黒煙を叩き込みます。しかし、チャンドラは容易には倒れません。
煙を自在に操り、爆発的な反撃で周囲を破壊。
煙の中から姿を現し、冷静に二人を見ます。
その姿に動揺するトキオとエリィ。
「つかれちゃったな……ぼく……」「みんな燃やしちゃったんだ……」
超人X5巻第31話より引用
チャンドラは、幼児のような口調で意味不明な言葉を繰り返し始めます。
「……あんまり僕をイライラさせないでくれよ〜!!」
超人X5巻第31話より引用
そして、叫びながら猛スピードでエリィへと襲いかかり、空へと突き上げるチャンドラ。
その姿は「混沌」寸前。
力のブレーキを完全に失い、暴走の深淵に片足を踏み入れていました。
※チャンドラの煙は通常200〜250度。
しかし、全力を解放した時、その温度は瞬間的に3000度を超える。
巻き込まれた者は「空飛ぶ棺桶」に閉じ込められたも同然。
今まさに、エリィがその直撃の危機に晒されようとしていました。
エリィを救おうと必死に走るトキオ。
トキオは無力感に苛まれながらも立ち上がり、限界を超えた決断をします。
「この瞬間が最後だと思え。人生の最後だと思え!」
超人X5巻第31話より引用
全てをかけて崖から、踏み出したその一歩。
「獣化!」の叫びと共に脚を獣化させ、宙を泳ぐも、まだ届かない。
トキオは覚悟を決めて叫びます。
「羽獣化!!」
背中から羽が生え、ついに空へ羽ばたきます。
「もっと……もっと高く!ハゲタカは世界で一番高く飛べるんだろう!」
超人X5巻第31話より引用
その思いと共にチャンドラへ突進。
頭突きを叩き込み、「ゴチン」という衝撃音が響きます。
チャンドラは地面へと落下。
同じく落下するエリィを、トキオは拾い上げます。
火だるまになったエリィを抱きしめ、トキオは叫びます。
「レイズ!エリィ……レイズしろ……!」
その声に応えるように、エリィの体は再生していきます。
しかしなおも立ち上がるチャンドラ。
力尽きて動けないトキオを背に、エリィは新しい夢を語りながら決死の覚悟を固めます。
「守ってくれてありがとな。帰るぞ、二人でだ!」
超人X5巻第31話より引用
決意を胸に、チャンドラへ掴みかかるエリィ。
「とどめをさしてやるだ!」
超人X5巻第31話より引用
エリィは、心の中で誓います。
最悪、殺してしまっても構わない。生き延びるんだ。オラたちが生き残るんだ。
しかし、チャンドラも必死に抗い、エリィを地面へ叩きつけ反撃を仕掛けようとします。
エリィは、死への恐怖を噛み締めながらも、迫るチャンドラの手を抑え込みます。
「いやだ。生きてやる……お前の全てを奪ってでも!」
超人X5巻第31話より引用
その瞬間、「カッ」という音と共に、チャンドラの体は螺旋を描いてエリィの手の中へと吸い込まれていきます。
戸惑い叫ぶエリィ。
すると背後から鵺が現れ、油断していたエリィに攻撃を仕掛けます。
直後、アヅマを倒した指子が合流し、鵺へアズマを引き渡します。
そして、鵺は謎のゲートを開き、エリィとアヅマを連れ去ろうとします。
仲間を奪われまいと、トキオは迷わずそのゲートへ飛び込みました。
弔いの塔の真実
一方その頃、中央キャンプでは森ひろとが「依頼完了」のメールを受け取ります。
撤退を考えた瞬間、佐藤一郎の「サイコシェアー強制破壊(グリッチ)」が脳を直撃。
森は不快な情報に押し潰され倒れました。
忘れ物の本を回収に戻っていた佐藤は、籠村と再会。
鵺の存在を訴え「一緒に行きます!」と食い下がる籠村に対し、「君は待機だ」と突き放します。
トキオとの約束を守れない悔しさに、籠村は涙を堪えられません。
一方、ゲートを通ったトキオが目を覚ますと、そこは謎の場所でした。
目の前にいたのは鵺。
「他の二人をどこへやった!」と迫るトキオに、鵺は「死にました」と冷淡に答えます。
驚愕するトキオの顔を見て、「冗談です」と笑う鵺。
鵺に導かれたトキオは、眠るエリィを見つけ安堵しつつも、アヅマを探すために塔を上っていきます。
道中、「聖母」と唱え祈りを捧げる僧侶たちを横目に、不安を抱くトキオ。
その背をポンと叩き励ますエリィ。
最上階にたどり着いた先には、「手の頭」を持つ巨大な生き物(聖母ゾラ)が待ち構えていました。その傍らには気を失ったアヅマ。
目覚めたアヅマは鎧の姿に変貌し、トキオの喉元に剣を向けながら、「トキオ……すまん!」と言います。
そう叫ぶと同時にトキオを蹴り飛ばし、壁際へ移動。
アヅマはそのまま鵺に攻撃を仕掛け、声を張り上げます。
「トキオ、乙田さん!倒すぞ、コイツ!」
超人X5巻第33話より引用
エリィも加勢しますが、放った黒煙は逆流し、自らに跳ね返ってきます。
吹き飛ばされた先に広がるのは、無数の死体。
その光景に驚くエリィ。
その時、ゾラがゆったりと告げます。
「ああ、感じるわ。おいで、予見の獣。私の子」
超人X5巻第33話より引用
「子ぉ!?」と驚くトキオ。
さらに鵺が明かします。
聖母の血で精製された薬「XEMBER(ゼンバー)」によって覚醒した超人はすべて聖母の眷属。
トキオとアヅマの力もまた、ゾラの血に由来するものでした。
衝撃の事実にトキオは声を震わせます。
「じゃあ……俺とアヅマの力は、コイツから……?」
超人X5巻第33話より引用
ゾラは「あなたたちを連れてきた理由を説明しましょう」と話します。
しかし、その前にエリィの中に吸収されていたチャンドラを救い出すのでした。
ゾラの予言

続けて、ゾラは静かに告げます。
「お見せしましょう。私の予見を。獣を求めたその理由を」
超人X5巻第33話より引用
ゾラはトキオたちに「黒き災い」の未来を見せ、自らの過去を語ります。
かつて「ソラ・シルハ」と呼ばれ、ヤマトモリを創設した予見者であったこと。
しかし、もう一人の予見者との対立から追放され、塔に籠もり続けてきたこと。
ゾラの見た未来は、ヤマトの滅亡。
家族や友が死に、悪病と羽虫が世界を覆い尽くす絶望の光景でした。
その未来を防ぐ唯一の希望として、ゾラはトキオに「獣の徴」を継ぐよう迫ります。
しかしアズマは疑念を抱き、ゾラに問いかけます。
「本当にトキオなのか?トキオじゃないとダメなのか!?」
超人X5巻第33話より引用
ゾラは「パズルのピース」に例え、「鉄のピース(アヅマ)では、はまらない」と断言します。
その言葉を受け、アズマは自らも見た「ヤマト滅亡の夢」を根拠に、ゾラの予言を肯定します。
「獣の徴をもらうべきだ」と語るアズマに対し、エリィは強く反発しました。
一方、トキオも迷いを抱きます。
「……力、もらった方がいいのかな」と呟くと、アズマは問い詰めます。
「トキオ!お前は見てないのか?ヤマトが滅びる夢を!」
超人X5巻第33話より引用
トキオが思い出したのは、滅びたヤマトと、自分がアズマから「お前のせいだ」と責められる悪夢でした。
ゾラは手を差し伸べ、「黒原トキオ、我が血の息子……あなたがヤマトを救うのです」と告げます。
その瞬間、エリィが黒煙の攻撃を放ちました。
驚くトキオとアズマ。
しかしゾラには一切通じません
ゾラは冷ややかに言います。
「何をする」
超人X5巻第33話より引用
「この場で力を使うイメージがえがけるのは、よっぽど私を疑っているということ」
さらにエリィは叫びます。
「さっきの部屋に、それとおなじアザがある死体があった…」
超人X5巻第33話より引用
「それ、もらうのすっげー危ねぇんじゃねぇのか!」
トキオは驚愕し、ゾラの真意を疑い始めます。
ゾラは淡々と続けます。
獣の徴は自身の力のリソースであり、並の人間や超人では肉体も精神も耐えきれず死に至ると語ります。
それでも万一に備えて力を与え続けてきたが、トキオならきっと耐えられるはずだと断言しました。
その言葉に、エリィは激しく反論します。
「結局、お前の意思で人を殺してんじゃねぇか!」
超人X5巻第33話より引用
「どんな事情があろうが、ひとの命を紙切れみたいにつかうなんて、人間のやることじゃねぇバケモンだ!こんなヤツの言うこと聞いちゃダメだ!」
ゾラは嘲笑し、「それを偽善というのです。」と言い放ちます。
激しい口論が続く中、トキオは恐る恐る提案します。
「あの……一回持ちかえるってのはどうでしょう。みんなで相談して、またくるとか…」
超人X5巻第33話より引用
その言葉にゾラは一瞬考え、「一度で呑み込める話ではないことは承知しています。わかりました」と穏やかに応じました。
しかし次の瞬間、ゾラの表情は冷酷に変わります。
「むりやり力を授けましょう」
超人X5巻第33話より引用
その言葉とともに、トキオたちは現実へと引き戻されます。
鵺が「話し合いは終わったので?」と問うと、ゾラは頷き、「ええ、終わりました。獣以外は殺してよいので、よろしくお願いします」と告げました。
震えるトキオは叫びます。
「か、かかかんぜんじゅーか……!」
エリィは「誰だよ!こいつ信じようとしたの!」と怒り、アズマは「ごめんごめん」と謝ります。
こうしてついに、ゾラとの決戦が幕を開けます。
超人X5巻の考察6選!ネタバレ解説あり

『超人X』第5巻では、チャンドラ・指子・森ひろとの襲撃や聖母ゾラの登場。そして、「黒き災いの予言」といった核心がついに明かされました。
スケールが一気に拡大し、キャラクターたちの選択が未来を決定づける局面へ突入する第5巻。
今回は、その中に仕込まれた数々の伏線や、石田スイ先生の前作『東京喰種』を想起させる要素に注目しながら、6つの考察をネタバレ込みで詳しく解説します。
輪坊法師の主刀

鵺と籠村の因縁の戦いの中で、鵺は籠村の剣を見て意味深な言葉を残しました。
「輪坊法師の主刀をあなたが持っていたとは……これで二刀そろう。収集欲をそそられますが、今はその時ではありません。あなたとは、いずれまたどこかで」
超人X5巻第30話より引用
この発言からも分かるように、輪坊法師が遺したとされる「主刀」には、物語の核心に関わる重要な秘密が隠されている可能性があります。
現在のところ、その正体や役割は明らかになっていません。ですが、鵺の強い関心から考えても、今後の展開で大きな意味を持つかもしれません。
籠村が手にする「主刀」が、どのように物語を動かすのか期待が高まります。
『東京喰種』赫者化のオマージュ?

『超人X』に登場する「混沌(カオス)」とは、超人が能力の暴走によって自我を失い、制御不能となる危険な境地です。
ところが、指子のように混沌を自らの戦力として操る存在も登場し、人間の心を完全に手放した怪物として描かれています。
この描写は、石田スイ先生の代表作『東京喰種』に登場する「赫者化」を強く想起させます。
赫者化もまた赫子が暴走し、自我を失った喰種が怪物的な姿へと変貌する現象であり、理性を捨てた進化の果てとして恐れられていました。
両者には共通点が見られます。
- 能力の暴走による変貌:制御不能の怪物へと変化する。
- 人間性の喪失:理性を失い、人間と呼べない存在になる。
こうした類似性から考えると、混沌化は、『東京喰種』で描かれたモチーフを下敷きにしつつ、再構築された要素と見ることもできそうです。
さらに、作中で指子が語った「本物は戦いの中で成長する」という言葉を踏まえると、混沌化は単なる暴走にとどまらず、その力を扱えるかどうかがキャラクターの命運に関わるテーマとなっていく可能性があります。
制御不能の破滅に向かうのか、それとも力を昇華させて成長へとつなげるのか。
その分岐点が、『超人X』の物語やキャラクターの進化を考える上で、ひとつの重要な視点になるのではないでしょうか。
ガッシュのオマージュ?
5巻第31話で、チャンドラに連れ去られたエリィを救うためにトキオが全力で走るシーンがあります。
この場面は、『金色のガッシュベル!!』を意識したオマージュではないかとも考えられます。
走り方や表情が、清麿やガッシュが仲間を助けようとするシーンと非常に似ており、重ね合わせて見ることができるからです。


石田スイ先生は、この描写を通じて「仲間を救うために走る」という王道の熱さを取り込み、『超人X』の世界で再解釈しているのかもしれません。
単なる戦闘シーンではなく、キャラクターの感情と読者の共感を強く引き出す演出のひとつとして機能している可能性があります。
もしかすると、他の何気ない一コマにもこうしたオマージュが隠されているのかも知れません!
エリィの夢


チャンドラとの死闘の後、力を使い果たし横たわるトキオに、エリィは新しい夢を語ります。
- パツキンの旦那と結婚する
- トキオやダンナたちと、やまほど旨いメシを食う
エリィが描いた、この新しい夢こそが、『超人X』におけるハッピーエンドのかたちを示唆しているのではないでしょうか。
作中に登場する「パツキンの旦那」という表現は、おそらくアヅマを指していると考えられます。
そして「トキオや旦那(アヅマ)たちと、やまほど旨いメシを食う」という未来像は、失われた日常の回復そのものであり、物語の結末にふさわしい理想にも思えます。
石田スイ作品は、絶望の中にも希望を描く構造が多く見られます。
『東京喰種』でも悲劇的な展開が続いた一方で、最後には仲間や家族と小さな幸せを共有する姿で幕を閉じました。
『超人X』においても、エリィの夢は物語の最終地点、あるいは読者に提示される理想像として配置されている可能性があります。
ただし、石田スイ作品らしく、その夢が全員そろって無傷のまま実現するとは限らないかもしれません。
誰かが欠けた形で叶うのか、あるいは象徴的・比喩的に示されるのか。
その解釈の余白もまた、この場面が「超人Xがどこへ向かう物語なのか」を示す重要な伏線であることを感じさせます。
佐藤一郎は裏切り者?
第4巻27話で姿を消した佐藤一郎。
しかし佐藤は意外にも再登場を果たします。
その理由は、忘れ物を取りに来ただけ。掲げたのは一冊の本であり、貴重な書物を回収しに戻ったのでした。
けれども、この登場にはどこか不穏な気配が漂っています。
なぜなら佐藤の帰還は、森ひろとが戦闘中に「依頼完了」のメールを受け取った直後のタイミング。
まるで計ったかのように佐藤が登場したからです。
果たして佐藤の言葉通り本の回収が真の目的だったのでしょうか。
それとも、裏で依頼や勢力とつながっている可能性があるのでしょうか。
今後、佐藤が本当の仲間であり続けるのか、それとも裏で暗躍する存在として牙をむくのか。
佐藤一郎というキャラクターは、ますます目が離せない存在になっています。
ゾラの予言のつながり

第5巻では、ゾラがトキオたちを連れ去った理由が明かされました。
ゾラが見せたのは「黒き災い」と呼ばれる未来。
混沌と化した超人のなれの果てが地を焼き尽くし、家族も友も恋人も奪い去る。
さらに死の病をまき散らし、その骸を苗床に羽虫が繁殖し、空を覆い尽くすという悪夢の光景です。
そして、その始まりはヤマトの滅亡だと告げられます。
この場面は第2巻で描かれた「夢のシーン」とも不思議に呼応しています。
汐崎との戦いを終えた後、トキオが「俺がジャイアンズの4番ですかー!」「うそー!」と叫び、夢から目覚めるシーン。
その直後には、エリィがギャグめいた寝言を漏らしていました。
一見コミカルな場面ですが、第2巻で、次のように考察しました。
- トキオを「黒沢選手」と重ねることで、ヤマトモリというチームの一員として戦い抜いた末に命を落とす未来を暗示しているのではないか。
- その死因は戦闘ではなく、「見えない病」や「体の変質」といった不可避の運命である可能性がある。
実際、「死の病であふれさせる」という予言は、2巻で考察した「不可避的な運命としての死」と重なっているように見えます。
さらに、ゾラの予言の後にエリィが「夢かなんかだろ、そんなん!」と反発したことや、トキオとアズマが崩壊するヤマトを目にしたのも夢の中でした。
こうした描写は、物語全体において夢と予言が密接につながっていることを示唆しているのかもしれません。
第2巻での考察はこちらで詳しく解説しています。
まとめ

この記事では以下について解説しました。
第5巻では、獣島合宿から一転してチャンドラ・指子・森ひろとの三方向の強襲が始まり、トキオ・アヅマ・エリィは分断され極限の戦いへ巻き込まれます。
弔いの塔では聖母ゾラが登場し、「XEMBER(聖母の血)」と「黒き災いの予言」が明かされます。
そしてゾラはトキオに「獣の徴」を継がせようと迫り、物語は核心へと踏み込みます。
第5巻は、トキオの成長や覚悟だけでなく、超人の力の起源と未来の惨禍というテーマを鮮烈に描いた重要な一冊です。
次巻では、ゾラとの戦いを通じて物語がどのように動いていくのかが大きな見どころです!



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