『超人X』13巻では、物語最大級の山場となるバチスタとの決戦が描かれます。
過去を書き換える反則級の能力「再構築」によって、何度倒しても立ち上がるバチスタ。
その絶望的な力に対し、トキオ、エリイ、サンダークは、それぞれの信念と覚悟を胸に立ち向かいます。
なかでも注目すべきは、エリイが身を賭して発動する「収穫(ハーヴェスト)」。
「再構築」というやり直しが許される力を、果たして奪うことはできるのか。
そして、過去に囚われ続けたバチスタと、「今」を生きようとするトキオの選択は、どこへ辿り着くのか。
本記事では、第12巻のあらすじを振り返りながら、物語全体に流れるテーマについて考察していきます。
超人X13巻のあらすじは?

『超人X』第12巻では、アヅマが死闘の末、自身がクイームによって作られた「肉の器」であるという衝撃の事実を知ります。
一方、エリイは、ゾラが死ねばトキオとアズマも死ぬという因果の関係を知り、戦う意味と選択に葛藤を深めていきます。
そして、ヤマトモリはゾラの玉座まで辿り着き、決戦が始まろうとした時、トキオは戦いではなく「対話」という選択を提示。
トキオが示したのは、「徴」の継承と予言を統合することで共存を目指す和解案でした。
この提案にゾラも同意し、両者はついに歩み寄ります。
そして、互いに手を差し出し、握手を交わそうとしたその刹那。
何者かによってゾラの腕が吹き飛ばされるという、衝撃的な事件が起こります。
未来を否定するバチスタの宣戦布告

物語は、ゾラとトキオが握手をしようとした瞬間、何ものかによって腕が撃ち落とされるところから再開します。
引き金を引いたのは、ヤマトモリの隊員でした。
しかし様子がおかしい。
次の瞬間、錯乱したように隊員たちに銃を乱射し始めます。
制止に入ったアーサーの前で、隊員の口から髪の毛のような異物が溢れ出しました。
その異物は、ゾラの落ちた手を掴み、こう呟きます。
「……とんだ茶番だ」
超人X13巻第62話より引用
「未来だのなんだの綺麗ごとを……」
その異物の正体はバチスタでした。
「秩序を守る?未来を創る?そんなもの知るか」と言い放ち、自らの手を切り落とし、ゾラの手を付け替えます。
「この世界には1ミリも価値もない一片も俺には……」
超人X13巻第62話より引用
「俺が守りたいのはたった一つ過去だけ。お前達が築き上げた未来も秩序も俺が壊してやる。」
「その残骸で俺が世界を作り直す!」
そう言い放った直後、巨大な塔が崩壊。
足場が消え、隊員たちは次々と落下していきます。
サンダークは重力操作で隊員を空中に留めますが、背後に「ゾワ」と感じた異様な気配。
振り返った先にいたのは、異形へと変貌したバチスタでした。
隊員たちの銃撃は通じず、むしろバチスタはその威力を集約し、撃ち返します。
現実そのものが、バチスタの命令に従っているかのような戦場。
さらに、攻撃を受けたアーサーが赤ん坊の姿へと変えられてしまう。
動揺するトキオに、ゾラは語ります。
「徴(しるし)が力を与える」
超人X13巻第62話より引用
「持ち主の……求める力と姿を……」
トキオは、その言葉を聞いて聞い返します。
「求めてるって…なにをよ」
超人X13巻第62話より引用
すると、ゾラは、「おそらく、時間に関わる力です」と言います。
バチスタは、「あらゆる結果を見通す目をくれ」と願い、
「修復してやる……どこだ」
「君がいる縫い目を……ハートリー……」
と思考をめぐらせると
頭の中に大量の情報が流れ込んできます。
それは、世界の心理。
そして空に現れたのは、巨大な縫い目。
世界がパッチワークのように継ぎ足され、めくれ、書き換えられていく光景が広がります。
バチスタが求めた力は、世界を書き換える力でした。
そして、ゾラは語ります。
「バチスタが本来もつ力は重力空間を歪め、圧し潰し、物を操る……そういう類の力です」
超人X13巻第62話より引用
「そして、鵺(ぬえ)の力は肉体がもつ力を縫合(ほうごう)する力」
「この二つに「獣の徴」が莫大なエネルギーを与え、彼の望む変化を生みました。」
トキオは、続け様に聞きます。
「アイツの望みって……」
超人X13巻第62話より引用
ゾラは、言います。
「過去の再構築です」
超人X13巻第62話より引用
バチスタは、「徴」によって新たな力を得ていました。
その力は時空すら歪め、過去に干渉することを可能にするという、常識を超えたものでした。
たとえば、割れてしまったガラスのコップがあれば、バチスタが望むだけで、それを割れる前の状態へと戻すことができるのです。
しかし、今のバチスタが望んでいるのは、元通りのコップではありません。
バチスタは修復ではなく、破壊を選ぶ。
それは、同じ形に戻すためではなく、まったく違う形へと作り替えるためでした。
眩い光を発し、空の縫い目がめろんを次々とめくれていきます。
トキオたちは、縫い目に飲み込まれないように必死に逃走。
しかし、次々と縫い目に飲み込まれていきます。
予見が奪った人生

トキオとエリイが目を覚ました場所は、現実とは違うふしぎな空間。
「クジラ!!クジラが飛んでるぞ!!エリイ!!クジラって…飛ぶんだな……」
超人X13巻第63話より引用
やがてエリイは、バチスタが縫い目の奥へ消えていく姿を目撃します。
二人も迷わず、その後を追いました。
そこはバチスタの記憶の中なのか、あるいは過去そのものなのか。
世界の輪郭が曖昧なまま、二人は若き日のバチスタを目撃します。
かつてのバチスタはヤマトモリの優秀な研究員でした。
超人覚醒剤「ember」の研究に没頭し、超人を増やして守りの負担を減らす。
その理屈にも、バチスタなりの正義があったのです。
しかし、ある日、ヤマト県議会は研究を危険視し、中止を命令。
バチスタは未練を断ち切るようにヤマトモリを去り、郵便配達員として普通の生活を選びます。
「じゃ、僕普通に働きます。」
超人X13巻第63話より引用
「研究に未練はない。」
「郵便配達とかやってみたかったんです。」
月日は流れ、バチスタが郵便配達員として普通の生活を過ごす中、ハートリーとともに迎える新しい命。
やっと掴んだ平穏。
幸福の手触り。
そこへ現れたのが、窓月子でした。
「お前を思って警告にきた。彼女を愛しているなら彼女との子どもはあきらめろ。」
超人X13巻第63話より引用
「お前たちの夢をみたのだ。」
「赤子と妻の亡骸の前でお前が全てを失う悪夢を…」
その言葉を聞いたバチスタは激昂し、予見を拒絶し、窓さまを追い払います。
「未来がわかることがそんなに偉いのか……偉いのか!!」
超人X13巻第63話より引用
「消えてくれ…二度と俺の前に現れるな……」
しかし物語は、拒んだはずの予見へと静かに近づいていきます。
さらにこの空間で、トキオとエリイはサンダークと合流。
平穏を望んだ男が、なぜ世界を壊す側へ行ったのか。
その答えは、まだ産声の前にありました。
絶望の果ての契約

予言の通り、ハートリーと赤子の死を目の当たりにしたバチスタは、絶望の底で、自死を図ります。
しかし、それでも死ねない。
発動するはずのない蘇生が働いてしまう。
生きたいのか、未練なのか。
自分でもわからないまま、ただ痛みだけが残ります。
そこへ現れた異形の存在、鵺(ぬえ)。
鵺は絶望の匂いに惹かれ、バチスタを器として選びます。
そして囁くのです。
「奪われたなら、奪え」と。

時系列で考えると、バチスタに近づいた鵺は、かつて剣の一族を滅ぼした鵺っぽい!
それ以前の鵺の存在も、今後の物語に関わってくるのかも。
鵺が差し出したのは、剥奪の力。
運命が筋書きなら、その筆を奪い、物語を壊せ。
そう唆され、バチスタの心は決定的に折れていきます。
バチスタが望むのは未来ではありません。
変えたいのは、過去。
会いたいのは、ハートリー。
鵺は言います。
「叶えることは可能だ」と。
鵺の力、苦目で幸せな記憶と失ったものの幻が混ざり合い、バチスタはついに決意します。
「ゾラの力を奪い、次のXになる」という決断。
その記憶の光景を遠くから見守るトキオ、エリイ、サンダーク。
サンダークは鵺の正体を語ります。
人ではない。
力が生んだ歪み。
超人に寄生し、奪うだけのウイルスのような存在。
そして、窓さまが弟のバチスタをずっと気にかけていたことも示されます。
救うためだった予見が、奪うための引き金になったのか。
不穏な空の下、3人は決断を迫られます。
バチスタを、どうするのか。
覚悟と決断

異なる異空間にいるソラ・シルハは推測します。
すなわち、ここは胎内。
縫い合わされた過去の断片が満ち、因果の羊水が漂う場所。
ここは世界改変の胚。
未完成の再構築装置でもあるのかと考えます。
すると、トキオとエリィは、縫い目から飛び出す。
そして、トキオはソラに向かって言い放ちます。
「割れたコップが分かったぞ!亡くなったアイツの恋人だ!」
超人X13巻第64話より引用
バチスタは、この力で亡き恋人ハートリーを救おうとしていました。
時間の洪水の中で、バチスタは過去の細部に取り憑かれています。
些細なボタンの掛け違い、時刻、順番。
そこへ立ちはだかる兄、サンダーク。
バチスタは叫びます。
「お前たちは俺を殺した。俺からすべて奪ったんだ」
超人X13巻第64話より引用
「俺は俺の人生を取り戻す。そのためなら、なんであろうと奪ってやる。」
そこへサンダークは説得します。
「たとえ過去を書き換えても、失った過去は戻らない。もうお前は、ハートリーが愛した男じゃなくなってしまった。」
超人X13巻第64話より引用
「俺は……信じている弟の善を……お前が俺の知る弟であればまだ……もっているはずだ……」
しかし、バチスタは無情にも言い放つ。
「知ったような口でハートリーを語るな」
超人X13巻第64話より引用
「とっくに死んでるんだよお前の弟はな……次はお前の番だ」
そして、無数の触手のような攻撃がサンダークを襲い、戦況は絶望的に。
しかしここで、トキオが立ち上がり、バチスタに立ち向かいます。
バチスタはトキオに言い放つ。
「お前は俺の未来に必要ない。バラバラにしてやる。」
超人X13巻第64話より引用
そして、トキオを迷いネズミと侮るも、トキオは言い返します。
「あんたの薬のおかげで今の俺がある」
超人X13巻第64話より引用
そして視界を縫うように接近し、渾身の一撃。
「これがお前の作った未来だ!」
超人X13巻第64話より引用

バチスタの右腕を切り飛ばすほどの深手を与えることに成功します。
そして、続けざまにエリィも攻撃を与えます。
「大煙」
しかし、その攻撃も無意味。
バチスタとの決戦は、もはや「力比べ」ではありませんでした。
バチスタは、再構築(レコンシス)という反則級の力を振るいます。
倒したはずが、次の瞬間には最初からやり直し。積み上げた攻撃も、仲間の連携も、世界ごと巻き戻されていくのです。
そんな相手に対し、ヤマトモリ側はそれぞれの覚悟を固めます。
サンダークは、弟への情を抱えながらも、多くの命を守るため「殺す」という決断を選択。
痛みを飲み込む覚悟。
兄としての断罪。
一方のトキオは、バチスタの境遇に理解を示しながらも、同情だけでは終われませんでした。
超人になったからこそ、誰かのために戦えるようになった。
教室で空を眺めていた頃より、今の自分のほうが好きだ。
そう言い切り、バチスタを止める側に立ちます。
「俺たち倒すだけでいいんですか…バチスタを」
超人X13巻第64話より引用
トキオがサンダークに問いかけるも、エリィは「そんなのいいに決まってんだろ!」と言います。
さらにエリィは、感情をぶつけるように続けます。
「悪人も罪人も、目の前にいたらだれでも同情すんのかよお前は!」
超人X13巻第64話より引用
その言葉の裏には、エリィ自身の決意がありました。
この戦いのせいで、アズマがどれほど大変な状況に追い込まれているのか。
それを知らないからきれいごとが言えるんだとトキオに目で訴えます。
サンダークも、
「弟を想う気持ちは消えない。だが、それ以上に、守るべきものがある……それが私の答えだ」
と言い、3人の覚悟が決まります。
再構築を止める方法
しかし問題はただ一つ。
バチスタには再構築がある。
何度でもやり直されるなら、倒しようがない。
そこで立てられたのが、決死の攻略作戦。
「剥奪」です。
再構築の直後、わずかに生まれる余白を狙い、エリイがバチスタの力の源を直接奪い取る作戦。
成功すれば、巻き戻しそのものを止められる。
しかし、最悪の場合エリィは、徴の力にに耐えきれず、エリイが命を落とす可能性すらある命懸けの一手。
それでもエリィは、迷いなく言い切ります。
「やるしかねぇ」
そして、ソラを含めた4人での総力戦が始まります。
トキオとサンダークが前に出てバチスタの注意を引き、ソラも後ろから援護。
「超重力波(ウルトラ・グラビティ・ブラスト)!!」
超人X13巻第64話より引用
重力と重力が激突し、空間そのものが軋み始めます。
ソラとバチスタによる、逃げ場のない重力の押し合い。
その隙を逃さず、サンダークとトキオも連続して攻撃を叩き込む。
一瞬、確かに追い詰めた瞬間、バチスタは、不敵な笑みを浮かべます。
「何度でも、やり直してやる」
超人X13巻第64話より引用
次の瞬間、再構築(レコンシス)が発動。
積み上げた攻撃は、最初から存在しなかったかのように消え去り、戦場は再び、絶望の初期位置へと引き戻される。
そしてバチスタは、笑いながら言い放ちます。
「Xの力は神の力!!俺が望むかぎり何度でもやり直してやる!!ははははは」
超人X13巻第64話より引用
そう言って、バチスタは嘲笑します。
終わりはない。勝ち目はない。
まるで自らが神のように。
しかし、その慢心こそが隙でした。
一瞬の隙を突き、エリィが一気に間合いへ踏み込み、バチスタを羽交い締めにします。
そして、叫ぶ。
「お前は人間だ!気が抜けてヘマする人間だ!!」
超人X13巻第64話より引用
そして、エリィはついに発動します。
「収穫(ハーヴェスト)」
力を奪う。未来を奪う。
巻き戻しの源を剥ぎ取る。
しかし奪っても奪っても、力は溢れ出し、エリイを飲み込もうとします。
それでもエリィは離さない。
全部奪わないとまた巻き戻される。
バチスタは叫びます。
奪われる、自分の力が、自分の未来が、と。
そしてバチスタは、残された最後の力を振り絞り、エリィの胸を、無慈悲に貫きました。
空中に垂れ下がるエリィの身体。
やがて、バチスタの冷え切った声が戦場に落ちます。
「……いい加減、マジで大人しくしろ。これでお終いだ」
超人X13巻第64話より引用
次の瞬間、空間が軋み、世界そのものがねじれ始める。
すべてを巻き込みながら、物語は決定的な局面へと突き進んでいきます。
超人X13巻の考察!

『超人X』第13巻では、 バチスタとの決戦が描かれます。
過去を書き換える反則級の能力「再構築」によって、何度倒しても立ち上がるバチスタ。
今回は、第64話のサブタイトル「Not you anymore」に隠された意味について徹底考察していきます。
「Not you anymore」に隠された意味

第64話のサブタイトル「Not you anymore(もう、あなたじゃない)」は、この回の核心を端的に表しています。
それは単なる敵対宣言ではなく、登場人物それぞれが「過去の自分」と決別した瞬間を示す言葉だったのではないでしょうか。
まず、この言葉を最も強く体現しているのはバチスタです。
バチスタはハートリーを取り戻すために過去を書き換えようとしていますが、
その行為自体が「かつての自分」を否定する選択でもあります。
未来を守る研究者だった男は、世界を否定し、
すべてを奪ってでも過去に縋る存在へと変わってしまった。
つまり「Not you anymore」とは、
ハートリーを救うために人であることを捨てた自分自身への宣告とも読めます。
一方で、この言葉はサンダーク側の視点にも重なります。
サンダークは最後まで「弟バチスタ」として説得を試みますが、
その姿はあまりにも無残に打ち砕かれます。
ハートリーを失った時点で、サンダークの知っているバチスタはもう存在しない。
サンダーク自身が、心のどこかでそう悟った瞬間こそが、
このタイトルに込められているのかもしれません。
そして、もう一人忘れてはいけないのがトキオです。
今回のトキオは、明らかにかつてのトキオではありません。
迷いながらも前に出て、バチスタに一撃を入れる姿は、成長した現在のトキオそのもの。
「Not you anymore」は、弱く、流されていた過去の自分から脱却したトキオの姿を示唆しているとも考えられます。
「Not you anymore」は、派手な展開以上に、
「人はどこまで変わってしまうのか」
「それでも人でいられるのか」
というテーマを突きつける回だったと言えるでしょう。
そしてこの問いは、次回で必ず答えを迫られることになります。
バチスタは本当に「もう、別の存在」になってしまったのか、それとも。
まとめ|超人Xは読むべき?13巻の評価と感想

この記事では以下について解説しました。
『超人X』13巻では、バチスタとの決戦がクライマックスへ突入しました。
世界を書き換える力「再構築(レコンシス)」を持つバチスタに対し、トキオ、エリィ、サンダーク、ソラは総力戦を展開。
何度でもやり直される絶望的な状況の中、再構築直後の余白を突き、エリィは能力を奪う「収穫(ハーヴェスト)」を発動。
過去を否定する者と、今を生きようとする者。
その選択がどんな結末を招くのか。
『超人X』13巻は、バチスタの行く末と世界の運命が大きく揺れ動く、まさに物語の転換点となる読むべき一冊です!
今後、物語はどこへ向かうのか。
ページをめくるたびに緊張感が高まり、読み進める手が止まらなくなることは間違いありません。
