『超人X』第4巻では、ついにトキオとアズマの壮絶な死闘が描かれます。
さらに、70年以上前の「超人大戦」と呼ばれる大規模な戦争の歴史が明かされ、超人Xという存在が物語の核心として語られる重要な巻となっています。
また、エリィの過去や籠村の一族に隠された悲劇、夏の特別合宿での修行など、それぞれのキャラクターの背景や成長も大きく描かれました。
そしてラストには「予見の獣」という新たな謎が提示され、物語は次の展開へと動き出していきます。
本記事では、第4巻のあらすじを丁寧に振り返りつつ、物語に込められたテーマや過去と現代のキャラクターの対応関係についても考察していきます。
ネタバレを含みますのでご注意ください!
超人X 4巻のあらすじは?

物語は、第3巻でアズマが「トキオ、僕と戦え」の一言から再び動き出します。
トキオとアズマの壮絶な死闘

覆面の超人となったアズマの猛攻を、一方的に浴び続けるトキオ。
「あの薬の効果が出たんだな? よかった…俺…お前が殺されたんじゃないかって…」
超人X4巻第22話より引用
必死に語りかけるトキオでしたが、その声は届きません。
アズマは「なぜ僕を見下すんだ!」と怒りをぶつけ、容赦なく襲いかかります。
車に轢かれてもなお、アズマは片手で車体を突き破り、宙へと投げ飛ばします。
後続車を巻き込み事故が多発する中、なおも「戦って、証明させろ」と叫ぶアズマ。
その姿は、もはや理性を失った怪物のようでした。
「何やってんだよ、アズマ! こんなの、お前らしくない…お願いだからやめてくれ!」
超人X4巻第22話より引用
涙ながらに訴えるトキオ。
しかし戦いを望むアズマを前に、ついにトキオは決心し叫びます。
完全獣化!
だが渾身の攻撃もアズマには通じず、ただ痛めつけられるばかり。
追い詰められたトキオは、幾度も傷を負いながら「レイズ」と叫び立ち上がります。
※レイズとは、「破壊」と「生成」が織りなす超人特有の再生現象です。
ただしその代償は大きく、使うたびに人間性が削られ、死を繰り返すほどに超人性だけが際立っていく危険な力でもあります。
度重なる負傷と甦生に、トキオの精神と肉体は限界へ。
ついに、トキオはアズマの腕に持ち上げられ、ぐったりと空中に晒されます。
「ぼくの…勝ちだッ…」
超人X4巻第23話より引用
そう呟くアズマ。
だがその瞬間、トキオの体が変貌。
鳥の羽が舞い散り、剣を振るう新たな力を発現します。
圧倒されるアズマの心を折ったのは、敗北そのものではなく「才能の差」を突きつけられた感覚でした。
海に落ち、必死に這い上がろうともがくアズマ。脳裏によぎったのはトキオとの幼い日の記憶。
「何も起きなければ…ずっとお前のヒーローでいられたのに」
超人X4巻第23話より引用
その想いを胸に、アズマは悟ります。
自分はもう、トキオのヒーローではないのだと。
アズマに突きつけられる「自制心」

激闘の後、アズマは意識を取り戻します。
目の前には佐藤一郎が立ち、無事かな?と声をかけてきます。
その横で、トキオは顔面を地面に突っ伏していました。
その後アズマは、ヤマトモリで星・サンダークと対面します。
「君には、超人として欠けているものがある。それがなにか…わかるかな」
超人X4巻第24話より引用
問いかけにアズマは「自分を抑える力」と答えます。
サンダークは、次のように告げます。
「そう自制心だ」
超人X4巻第24話より引用
続いて、多くの超人が器を超えた力に苦しめられてきた。
ヤマトモリで力を抑える生き方を学んでほしいとサンダークに言われます。
力の強さよりも「心の制御」が求められることを、アズマは突きつけられます。
一方その頃、トキオは酸素マスクをつけて眠ったまま。
トキオの周りには、籠村、モモマ、エリィの3人がいました。
籠村は、アズマとの連戦を一人で乗り切ったことに驚きつつも、「だったら最初から動けよ」と皮肉めいた言葉を漏らします。
エリィは「トキオは強い。周りを気にかける分、一人の方が戦いやすいんだ」と評価。しかし、籠村は「俺たちが足手まといってことか」と喧嘩に発展しそうになります。
そんな仲間たちを、少し離れた場所から静かに見下ろすアズマ。
アズマの胸には、サンダークに突きつけられた「自制心」という課題が重くのしかかっていました。
超人Xの存在とヒーローへの誓い

その後、アズマはひとり歩き、海へ辿り着きます。
海辺で、木に引っかかっていた布が風に舞い上がるのを見て、アズマの記憶は幼少期へと遡ります。
「風、気持ちいいー! ホントに飛べそう! 」
超人X4巻第24話より引用
「じゃあ先に飛ぶから、ついてきて!」
幼い日のトキオと過ごした、無邪気な時間です。
しかし現実に目を戻した先にあったのは、海辺で命を落としたハイエナの亡骸でした。
群がる鳥を払いのけ「やめろ!」と叫びながら、アズマはその体を抱きしめて涙します。
まるで、自分自身の姿をそこに見ているかのようでした。
このとき、物語を貫く「超人X」の存在が語られます。
「一つの世代に必ず一人、世界を滅ぼすほどの力を持つ超人が生まれる。
超人X4巻第24話より引用
その存在は善なら盾、悪なら剣となる。
人々は恐れと羨望を込めて、それを超人Xと呼んだ。」
この小さなヤマトという県に、その存在が姿を現そうとしていたのです。
アズマの背後には、能面をつけた謎の男(薬屋)が忍び寄っていました。
物語はエリィの過去へと移ります。
貧しい土地で生まれたエリィの母は、都会への憧れから盗賊団の首領となり、非道な生き方で名を轟かせました。
しかし病に倒れ、娘を祖父母に託して逝きます。
母の生き様を知ったエリィは「奪うのではなく、与える人間でありたい」と誓いました。
けれど血に刻まれた運命はエリィの心を揺さぶり続けます。
「うばうものは、いつかうばわれる。」「お前もそうなる側だ」と。
超人X4巻第25話より引用
その囁きが、常にエリィを追いかけていたのです。
一方トキオは、不気味な夢を見ます。
崩壊するヤマトの街で、アズマに「お前のせいだ」と責められます。
そして夏休み直前、エリィは追試の対象となります。
トキオに勉強を教えてほしいと泣きつくエリィの前に現れたのは、アズマでした。
警戒するエリィに、アズマは頭を下げます。
「謝りたいんだ。この前のこと。乙田さんとも仲良くしたい…できれば」
超人X4巻第25話より引用
エリィもまた「あの日、アズマを止められなかった」と後悔を打ち明け、二人は握手を交わして和解を果たします。
帰り道。エリィとアズマが和解したことに安心するトキオでしたが、アズマの胸にはサンダークに言われた「自制心の欠如」が重くのしかかっていました。
心の思いをトキオへ伝えます。
「本当に僕がなにかしてしまったらお前、僕を…殺せる…?」
超人X4巻第25話より引用
突然の問いにトキオは即答します。
「無理だ! でも俺が強くなる。何かあったら俺が止める。」
続いて、こう告げます。
「だから俺といっしょにキーパーになろうぜ、ヤマトで」
超人X4巻第25話より引用
眩しすぎるその言葉に、アズマは苦しみながらも決意します。
トキオと共にヒーローになりたいと。
夏休みの訓練合宿

一方、トキオ拉致事件の裏で動いていたのは、薬屋と呼ばれる能面の男でした。
薬屋はアズマの件をリカルドやウメザワから聞き、特徴として「手枷」と「マント」を把握します。
しかし、ウメザワの回復は当分先であると考え、薬屋は次の一手として、チャンドラに連絡を取りました。
「獣狩り」の誘いを受けたチャンドラは、食事を投げ捨て「聞かせろ!」と立ち上がります。暗躍する影は、着々と動き始めていたのです。
一方その頃、ヤマトモリでは訓練生たちが講堂に集められていました。
佐藤一郎が受信装置を通じて映像を映し出し、過去の戦争について語り始めます。
1923年、大ゲルダ国の大統領クイームは、独自に設計した戦車や重火器に姿を変え、戦場を蹂躙しました。
ある軍事研究家は「クイームの存在で兵器史は70年早まった」と語ります。
人々はクイームを「世界を滅ぼす剣」と恐れましたが、生き残ったのはわずかに一人。
ヤマトモリ創設者、白羽ソラでした。
佐藤は、Xは世界敵にも救世主にもなり得る存在であり、訓練を怠らないよう訓練生たちに説きます。
映像を見終えたトキオとエリィは顔色を失い、アズマに「大丈夫か?」と声をかけられます。
「なんか落ち込むわ」
超人X4巻第26話より引用
「オラも夏休み早々、どえらいもん見せられたでな…」
二人の胸に重苦しい予感だけが残りました。
その後、佐藤から夏休みの特別合宿が提案されます。
舞台となるのは「獣島」の最南端・尾島。
ここは、かつてヤマトの超人たちがゲルダ軍を迎え撃ち、多くの犠牲を払いながら守り抜いた歴史ある島でした。
今回の合宿の目的は、訓練生それぞれが自分の能力を深く掘り下げ、成長につなげること。
佐藤は一人ひとりに課題を与えました。
トキオには、「部分獣化」の習得、さらに可能であれば「飛行」まで。
アズマには、自らの能力を特定し、その力にふさわしい「名付け」を。
エリィには、新たな技の開発。
そして籠村とモモマには、基礎訓練の徹底が課されます。
さらに今回は、特別講師として二人の現役キーパーが招かれていました。
ひとりは「暗黒の超人」シャドル・シャント。
暗黒のエナジーを放出し、不気味なステップで相手を翻弄する超人です。
もうひとりは「いばらの超人」八巻ロジャ。
体や触れた物を鋭い棘へと変化させる力を持ち、その棘は硬く、触れただけで激しい痛みを伴います。
2人はいずれもナガマタ県で活躍する現役キーパーであり、訓練生たちは2人から直接指導を受けることになりました。
また、訓練は3つのチームに分かれて行われます。
- シャドルチーム:エリィ(新技開発)+シモン
- ロジャチーム:トキオ(部分獣化)+モモマ
- 佐藤チーム:アズマ(能力特定と名付け)
合宿が始まり、トキオ、エリィ、アズマはそれぞれ課題に取り組みますが、思うようには進みません。
エリィは、シャドルに新技を披露するも「下品」と一蹴され、厳しい指導を受けます。
ロジャの指導を受けるトキオは「部分獣化」に苦戦。
アズマは獣化を「刃物」へと変化させる課題に挑むものの制御できず暴走。
佐藤の超人技「小楽園の饗宴(サイコ・シンフォニア)」で抑え込まれ、再挑戦を促されます。
7日後、トキオは「腕だけの獣化」に成功。
アズマも「ナイフ」の生成を可能にするなど、訓練の成果が現れ始めていました。
仲間たちの過去と迫り来る新たな影
訓練の成果が見え始めた仲間たちは、それぞれ自分の夢や目標を語り合います。
それぞれが「超人としてどう生きたいか」を胸に秘めていました。
しかし、籠村だけは違っていました。
籠村の胸にあるのはただ一つ。
「一族の雪辱」でした。
籠村の家系は「借剣」と呼ばれる特殊な力を受け継ぐ剣の一族です。
大戦中ソラ・シルハの指揮下で英雄的な戦果をあげたものの、戦後には英雄狩りに狙われ、一族は襲撃を受けました。
幼い籠村は数少ない生き残りであり、虐殺の記憶と復讐心を背負って生きてきたのです。
物語は、一族を滅ぼした異形の超人の姿を映し出します。
その存在は籠村にとって消えない傷であり、復讐の理由そのものとなっていました。
悪夢から目覚めた籠村は、浜辺で飛行の訓練を続けていたトキオを見かけます。
羽根を上手く生やすことのできないトキオは、焦りと苛立ちを募らせていました。
そこに籠村が現れます。
「飛ぶより先に、攻撃手段を身につけたらどうだ?」
超人X4巻第27話より引用
その助言に、トキオは静かに答えます。
「この力ではじめて仲間を救えたんだ。俺にはこっちも…必要なんだ」
超人X4巻第27話より引用
二人の間に、少しずつ信頼が芽生え始めていました。
一方その頃、アズマはひとり、静かに考えていました。
「覚醒する前と後で、自分は何が変わったのか」
力を確かめるように一つひとつ試しながら、その正体を探ろうとしていたのです。
そんなアズマの前に、謎めいた女性が現れます。
女性はアズマを見つめ、意味深に問いかけました。
「君かあ?予見の獣っては」
超人X4巻第27話より引用
次の瞬間、女性の頭部が超人へと変貌を遂げます。
こうして物語は、さらなる謎と不穏な気配を残したまま、幕を閉じます。
超人X4巻の考察!ネタバレ解説あり

『超人X』第4巻では、アヅマとトキオの壮絶な死闘、そして、超人Xという存在の正体に迫る重要なエピソードが描かれました。
さらに、70年以上前の「超人大戦」と呼ばれる大戦争の歴史が明かされ、物語のスケールは一気に広がっていきます。
今回は、第4巻で示された過去の戦争と現代キャラクターの対応関係を中心に考察。ネタバレ含めて詳しく解説します。
過去の大戦争と現代キャラクターの対応関係
第4巻では、70年以上前に起こった「超人大戦」という大規模な戦争の存在が明らかになりました。
そこで語られるのが、戦争の超人「クイーム」と、英雄・神獣「ソラ・シルハ」という2人の象徴的な存在です。
さらに第24話では、物語を貫くキーワード「超人X」について説明されます。
一つの世代に必ず一人、世界を滅ぼすほどの力を持つ超人が生まれる。
その存在は善なら盾、悪なら剣となる。人々は恐れと羨望を込めて、それを超人Xと呼んだ。
そして、その超人Xが、この小さな県ヤマトで現れようとしていた。
石田スイ先生は、この「過去の戦争」を現代に重ねるような構図を描こうとしているのではないかと推測されます。
そして、次のような対応関係が浮かび上がってきます。
- 英雄シラハ・ソラ→黒原トキオ
- 皇帝クイーム→東アヅマ
では、アントランド王子や英雄アンティティスに対応する人物は誰になるのでしょうか?
現時点では「雷の能力」を持つ超人はまだ登場していません。
この設定を引き継ぐキャラクターが今後登場するのか。
物語の展開にますます期待が高まります!
まとめ|超人Xは読むべき?4巻の評価と感想

この記事では下記について解説しました。
第4巻では、トキオとアズマの死闘を通して二人の関係性が揺らぎ、アズマには「自制心」という課題が突きつけられました。
一方で、海辺のシーンでは超人Xの存在がナレーションで語られ、その超人がヤマトで現れようとしていることが明かされます。
さらに、エリィの過去や籠村の一族にまつわる悲劇が描かれ、仲間たちの心の闇やそれぞれの目標が浮き彫りになりました。
夏の特別合宿では、部分獣化や能力の名付けといった訓練を通じて成長が見られた一方、新たな影として謎の超人が登場し、次巻への不穏な伏線が残されています。
第4巻は、キャラクター同士の絆や葛藤だけでなく、「過去と現在が重なり合う構図」を強調する重要な巻といえるでしょう。
次にどんな展開が待ち受けるのか、目が離せません!